Binanceは2026年11月3日、10月29日に発生したセキュリティインシデントの初期調査結果と対応状況をXで公表しました。同社によると、影響を受けた暗号資産は約63億4,000万ドルです。損失は利用者ではなく同社が負担し、必要額の100%を超える資金をすでに確保したとしています。
調査は継続中で、調査結果は今後、独立した専門家による検証の対象になるといいます。
資産補充は10月31日時点で98%と報告
Binanceは、10月31日時点で影響を受けたトークン資産の98%を補充し、準備金証明(Proof of Reserves)のページで確認できると説明しました。残る流動性の低い資産については購入を進めているといいます。これは同社の報告であり、本記事では準備金証明ページを確認していません。
11月3日の更新時点では、約28億5,000万ドル相当の暗号資産を凍結または移転阻止したとしています。ただし、この金額は照合結果や市場価格の変動によって変わる可能性があります。凍結・移転阻止は、資産の回収完了を意味するものではありません。
内部の署名サービスを悪用、出金停止だけでは封じ込められず
同社の説明では、攻撃者は内部のウォレット署名サービスへの不正アクセスを悪用し、通常の出金処理を経由しない取引を実行しました。10月29日20時05分〜20時09分(UTC)には、5つのホットウォレットから計2億3,346万XRPが攻撃者のアドレスへ送られました。このほか、SolanaとOptimism上で約97万500 SOLと4,420万OP、その後に18,270 BTCが送られたとしています。
さらに攻撃者は、EthereumのEIP-7702を使い、Binanceのホットウォレットの実行権限の一部を攻撃者側のスマートコントラクトへ委譲したといいます。同社は出金停止などの対策を取りましたが、ブロックチェーン上に設定された権限は通常の出金基盤から独立して機能するため、出金停止だけでは不正な資産移動を止められなかったと説明しています。
同社によると、対象ウォレットはMPC(マルチパーティ計算)を採用しており、単一の秘密鍵で直ちに権限を取り消すことができず、専用の手順が必要でした。最後の不正送金とする2,961.9 ETHの取引は10月29日23時56分(UTC)に確定しました。その後の不正送金は観測していないといいます。10月30日0時10分(UTC)には、Binance14ウォレットのEIP-7702による権限委譲コードを解除したとしています。
偽の採用面接と社内AIツールを経由した多段階攻撃と説明
Binanceは、単発の侵入や単純なフィッシングではなく、複数の手法を組み合わせた攻撃だったと報告しました。6月には、エンジニアがAIコーディングツールを導入しようとして改ざんされたHomebrewのインストーラーをダウンロードしました。同社は端末交換と関連認証情報の更新を行ったものの、その人物の役割や関連する同僚の情報が攻撃者に知られたとしています。
9月には別のエンジニアが偽の採用面接で課題を装ったコードを業務用端末へダウンロードし、セットアップ時に不正なコードが実行されたといいます。10月20日には、その端末と社内AIツールが足掛かりとなり、別のエンジニアの端末へ侵入が拡大しました。攻撃者はコンテナ配備用の権限トークンを発見し、10月29日の攻撃につなげたと説明しています。
攻撃主体について、BinanceはFBIの最新情報が北朝鮮の関与を示していると記載しました。
システム再構築と第三者検証へ
Binanceは11月3日時点の対応として、影響を受けたウォレットシステムを新しい環境で再構築し、社内AIツールとアクセス制御も再構築したと報告しました。影響端末の交換、関連する認証情報・トークンの廃止、全従業員端末のセキュリティスキャン強化、ウォレットサービスのリスク管理とAIによる異常行動検知の強化も挙げています。
今後は独立したサイバーセキュリティ専門家による包括的な検証を進めるほか、AIを活用した検知や開発環境の保護への投資を拡大する方針です。セキュリティ研究基金の設立にも取り組むとしています。
今回の投稿では、日本を含む国・地域別の被害内訳や、利用者ごとの影響、出金サービス全体の復旧状況は示されていません。
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